Interview

世界でイチバン有名な、日本のサッカークラブに
“情熱を、持ち続ける”秘訣を学ぶ

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Vol.6 岩本義弘さん(南葛SCゼネラルマネージャー

〈プロフィール〉
いわもと・よしひろ/1972年生まれ。南葛SC取締役ゼネラルマネージャー。TSUBASA代表取締役、スポーツメディア『REAL SPORTS』編集長、サッカー解説者なども務める、スポーツに関する幅広い活動で知られるマルチプレーヤー。元『サッカーキング』『ワールドサッカーキング』編集長。

『キャプテン翼』の“南葛”を冠に
日本サッカーの頂点Jリーグを目指す

世界でイチバン有名な、日本のサッカーチームは?
と問われたら、正解は、間違いなく「南葛SC」だろう。
南葛SCは、ご存じ、世界的ヒット漫画『キャプテン翼』の主人公・大空翼が、小学生の時に所属した、架空のチーム。
しかしまた、南葛SCは、実在するチームでもある。
それが、Jリーグ加盟を目指す、社会人サッカークラブとしての「南葛SC」だ。
チームの社長は、もちろん『キャプテン翼』の原作者、高橋陽一先生。
実在する南葛SCは、男子のトップチームだけでなく、なでしこを目指す女子の「ウイングス」も有する。男子のジュニアユース(中学生)とジュニアのスクールまで含め、300名ほどの選手を擁する、東京・葛飾区を代表するクラブチームだ。
「南葛SCは、Jリーグ加盟を目指していますが、簡単ではありません。なので、“何年でJ入り……”とは、言いません。1年、また1年、全力を尽くせば、そのうちJにたどり着くだろうと。10年以内には上がりたいですが、それくらい厳しい」
そう語るのは、南葛SCのGM(ゼネラルマネージャー)、岩本義弘さんだ。
GMの岩本さんの役割は、仕事を持ちながらサッカーを続ける選手を育成し、Jリーグ加盟という夢を実現させるための資金の工面も含めた総責任者である。
新しいシーズンへ向けたチーム始動の初日、真新しい葛飾区内のグラウンドで、岩本さんは決意のほどを語り始める。
「今期の目標は、関東リーグ2部への昇格です。今、アマチュアのカテゴリーはとてもレベルが高く本当に厳しいのですが、南葛SCに関しては“上がらない”という結果は、許されません」
Jリーグを目指す南葛SCは、J1から数えると、現在J7にあたる位置にいる。
日本のサッカー頂点である、Jリーグ。
Jリーグには、J1、J2、J3があることは、よく知られている。
しかも、Jリーグの下には、JFLという全国リーグがある。さらには、関東リーグの1部と2部も控えている。
東京都1部リーグに参戦している南葛SCは、ここで勝ち上がり、関東リーグ2部への昇格を、新たなシーズンのミッションに課している。

地域に溶け込むためには
ともかく何でも”相談する”

「Jを目指しているからと言って、地域の人たちが、無条件で南葛SCに協力してくれるわけではありません。今は、葛飾区がバックアップしてくれて、地域のサッカー協会や、他のクラブと調整しながらグラウンドを優先して使わせてもらっていますが、最初から上手くいっていたわけではありません」
サッカーのみならず、スポーツチームにとって、地域の協力は欠かせない。
「とにかく、出向いて行って、たくさん会って、話をして、チームが考えていること、やっていることを、常に共有していくしかありません。ご飯を食べに行ったり、飲みに行ったり、葛飾区内で打ち合わせしたりです」
その際に大切なのが、“相談する”姿勢だという。
説明でも、説得でもなく、相談すること。
南葛SCの課題を、地域の人たちも「自分ゴト」として捉えてもらうには、“相談する”という働きかけが、大切だったという。
「葛飾区とは、スタジアムを作る動きも一緒にやっています。なので、区の生涯スポーツ課や、広報課、都市整備の部署など、さまざまな部署と“相談して”います。地元の企業とも、もちろん同じです。そうした積み重ねがあって、チームを手伝ってくれたり、応援してくれたり、試合に脚を運んでもらえるのだと痛感しています」
そうした努力が徐々に実を結び、多い時には1000人以上の観客が、スタジアムに集まるまでになってきた。

シーズン初めのこの日は、新メンバーの選考会も行われたため、原作者でありチームの社長である、高橋陽一先生も会場に姿を見せた。

スポンサーと選手の距離を
もっと縮める、新たな試み

「JFLなど、Jリーグ目前なら話は違いますが、東京都1部リーグのカテゴリーで、お金を集めるのは、簡単ではありません。南葛SCのスポンサー企業も、チームのビジョンに賛同してもらって、一緒に夢を見ていこうという企業ばかりです。それでも足りない分は、自分の会社からの補填や、高橋先生から援助を仰ぐしかありません。チームを、経常利益で赤字にはできませんから」
東京都リーグ1部のカテゴリーのチームのスポンサーにとって、メディアなどへの露出による広告効果は、あってないようなものだという。
ひと口ひと口は小さくても、熱心に支えてくれる地元の存在が、南葛SCを支えているのだ。
そんな、スポンサーと選手をつなぐ、新たな試みが、2020年の春からのシーズンで始まるという。
「公式戦のユニフォームでは無理ですが、チームの練習用ウェアに、選手個人のスポンサーを付けられるようにします。テレビで、そういう取り組みを見て、このカテゴリーにも合っているなと思ったんです。“この選手を押しています”って、スポンサーであることを直接アピールできて、いくばくかのお金も選手に還元できますから」
練習用ウェアにスポンサーがつけば、練習を見るキッカケにもなる。
さらに、選手のモチベーションアップも期待できると、一石二鳥だ。
「葛飾区って、東京23区の中でも、下町で、ローカル色が強いんです。“おらが町の”という感覚が強い。『キャプテン翼』だけじゃなく、両さんの『こち亀』(漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』)の秋本治先生も、映画『男はつらいよ』シリーズの山田洋次監督も、みんな葛飾です。南葛SCも、葛飾の魅力を、地元の皆さんと一緒になって発信するクラブでありたいと思っています」

トップリーグを目指すために
必要なのは、情熱を継続させること

「一番は、情熱を継続させることです」
物事を立ち上げる際は、周囲のスタッフも含め、確かに、テンションは高い。
「でも、夢までの時間は、実際、かなりかかります。最近インタビューした大谷翔平選手が語っていたのですが、『好きなことをやり続ける才能が、自分にとっての唯一の才能』だと。それって、凄く納得できる部分がありました」
スポーツ界でマルチに活躍する岩本さんは、ウェブメディア『REAL SPORTS』の編集長やYahoo!JAPANの東京2020担当も務めている。
岩本さんが、MLBロサンゼルス・エンジェルスの大谷翔平選手から得た言葉は、南葛SCのGMとしての、自分自身の情熱の糧になっている。
「それでもやる、というのが大事だと思います。だからこそ、継続するためには、いろいろなパワーが必要です。自分がやりたいこと、好きなことを続けるって、気持ちだけじゃなく、いろいろ工夫する必要もあると思います。結局、継続しなければ、終わっちゃいますから」
根性だけではない、継続させるための工夫。

次回は、ひとりひとりの選手、選手を支える裏方、そしてチーム全体の気持ちを高める、岩本さんの工夫について、さらに掘り下げてゆこう。

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