Interview

間違いだらけの「ホルモンバランス不調」
女性アスリートの“秘かな”悩みを解消しよう!

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女性アスリートの多くが“秘かに”抱く、カラダの悩み。
その悩みの多くは、“ホルモンバランス不調”ではなく、むしろ“女性ホルモンが正しく働いているからこそ”起こるという。

多くの女性が感じている悩みであるものの、男性の指導者はイメージが不可能。だからこそ女も男も、最新の知識と対処法を知っておくべく、スポーツドクターでもある婦人科医、東京・渋谷区の「イーク表参道」副院長、高尾美穂先生にお話を伺った。

「男性の指導者が、女性アスリートのカラダを理解しようという動きは、ここ5年ほどで格段に進んできました」
いよいよ核心の、第2位と、第1位の発表だ!

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Vol.16 高尾美穂さん(「イーク表参道」副院長)

〈プロフィール〉
たかお・みほ/産婦人科専門医・医学博士・婦人科スポーツドクター。「女性のための統合ヘルスクリニック イーク表参道」副院長、「株式会社ドーム」アドバイザリードクター、「スポーツ庁・国立スポーツ科学センター」女性アスリート育成・支援プロジェクトメンバー。この他、大手スポーツクラブ数社の顧問医師のほか、「一般社団法人アスリートヨガ事務局」理事も務め、ドクター兼ヨガ指導者として、数多くのアスリートの指導にあたり、関連する講演活動も数多く行っている。

《第2位 生理前の調子の悪さ》

原因は“ホルモンバランスの不調”ではなかった!

いよいよ核心に迫る、連載3回目!
ヨガの指導も行う、スポーツドクターの婦人科医、高尾美穂先生は、女性アスリートの秘かな悩みについて、分かりやすく解決方法を教えてくれる。
「ここ数年で、女性アスリートの間に“男性と同じことをやっていても、強くなれない”ことが伝わってきました」

高尾先生は、エストロゲンを“女性らしさのためのホルモン”と呼ぶほど、女性にとって重要と力説している。
「エストロゲンがちゃんとあると、排卵が起きます。排卵があれば、カラダは妊娠ができる状態になっています。そういうカラダの状態になって、2番目の女性ホルモン=プロゲステロンが出ます」

2019年11月、ケニアのスラム街で、女性対象の出張保健サービスを視察。「世界で妊産婦と女性を守る」国際NGO〈JOICFP(ジョイセフ)〉の取り組みを伝える活動も行っている。写真提供/高尾美穂

“カラダに溜め込む”ホルモンが、むくみや便秘を生む

「プロゲステロンは、カラダが妊娠できる状態を保つホルモンだ。
「プロゲステロンは、いろいろなものをカラダに貯め込む働きをします。“食欲が増える”のも、そのひとつです。さらに、水分も貯めようとします。水分が皮膚に貯まると、それを私たちは“むくみ”と感じます」

水分も貯めこむ“むくみ”は、皮膚だけでなく、大腸の壁にも起こるという。
「大腸の壁がむくむと、大腸の働きが低下し、便を運ぶ蠕動(ぜんどう)運動が弱くなり、便秘になります。生理前に便秘だった方が、生理が来るとお通じが良くなったり、下痢っぽくなるのは、こうした理由からです」

脳のむくみ=頭痛

「同じように、脳も“むくみ”ます。頭蓋骨の中で、脳の組織がむくむと、その周りの液体(髄液)の圧が上がります。それで起こるのが、頭痛です」
しかしながら高尾先生は、こうしたむくみや便秘、頭痛といった生理前の調子の悪さは、ホルモンバランスの不調が原因ではないと解説する。

「生理前の調子の悪さを、世の中では“月経前症候群”や“月経前緊張症(PMS)”と呼んでいます。その理由を、多くの女性は“ホルモンバランスが悪いから”と思っています。でも、それは間違いで、ちゃんとホルモンが出ているからこそ、起こる変化だと言えます」
“生理前に嫌だな”と思えるカラダの変化は、実は、自分のカラダのサイクルが上手く巡っているサインだと言う。

「上手くサイクルが巡っているけれど、今は“自分が困っている時期でもある”と思って欲しいですね。自分のカラダの不調に対して、ネガティブに考えるのではなく、まずは前向きに捉えてもらいたいと思っています」

チームが強くなるためにも、知っておきたい

生理前の調子の悪さを示す“月経前症候群”や“月経前緊張症(PMS)”は、ここ20年くらいで知られるようになった言葉だという。
「それ以前に、女性が“生理前に困っていなかったか?”と言えば、もちろん同じように困っていました。でも、今の社会でPMSが広く認知されたのは、女性が社会において、より大きな責任を持つ時代になったからです」

高尾先生は、アスリートの指導者だけでなく、企業なども含めた社会全体で、さらに広い理解が必要だと語る。
「女性は、“カラダが変化する”、“生理前の不調は起こる”と理解していただくと、チームとして、組織として、上手く回っていくと、私は感じています」

ケニアの妊婦死亡率の高さは、正しい知識や情報のないままの妊娠出産に寄るという。正しい知識の大切さは、日本でも同じだと高尾先生は語る。写真提供/高尾美穂

まずは、“困っていること”に対処しよう!

さらに、生理前には、メンタルの変化も起こるという。
「妊娠中の雌ライオンを、イメージしてください。外に対して攻撃性が高くなったり、巣に籠って出なくなったりしますよね。生理前は、こうしたメンタルの変化が起こりえるのです」
こうした気持ちの変化は、アスリートにとって、集中力の低下に直結するという。

「ゴルフなら最後の1パットを沈められるか、サッカーのPKなら練習通り決められるか、バスケで3ポイントを入れられるか……。集中力は、本当にいろいろなところに関わっています。そんなタイミングで、“上手くいかなかったのは、自分の弱さのせい”などの思いを、私は選手にさせたくありません」

高尾先生は、生理前の調子の悪さへの“根本的な解決法はない”と語る。
「なので、困っていることへの対策が必要です。例えば、アメリカでは、ある種類のピルであれば、改善が見込めることを謳っています。本当に困っている方は、一度、婦人科で相談していただくのも、ひとつの良い方法だと思います」

《第1位 生理痛が重い》

生理は病気ではないが、生理痛は病気である

「生理痛が重いと判断してよいのかは、多くの女性が“もやっと”していますよね(笑)」
その理由は、生理痛は“他人と比較できない”から。
「生理は病気ではありませんが、生理痛は病気です。本人が辛いのであれば、一度、婦人科に相談して欲しいところです。婦人科に相談すれば、“ハッキリした原因があって生理痛が重い”のか“ハッキリした原因がないけれど重い”のか、分けて考えられます」

“ハッキリした原因があって重い”代表例は「子宮内膜症」だ。
「内膜症の方は、毎月の生理が来るたびに、生理痛がちょっとずつ悪化します。でも、内膜症を治療すれば、生理痛の悪化も防げるし、生理も軽くなります。まさに、いいことだらけです」

一方、生理の際に感じる不調は、広く「月経困難症」と呼ばれている。
「月経困難症は、生理中に、お腹や腰が痛い、気持ちが悪くなったり、胃がギューッとなるなど、いろいろな訴えがあります。この月経困難症に、先ほど紹介した生理前の体調不良も含めた、いわゆる“生理にまつわる調子の悪さ”が、一般的にも、女性アスリートのカラダの悩みとしても、一番多いですね」

ケニアのスラム街などで、JOICFPが行っている出張保健サービスには、国際家族計画連盟(IPPF)や日本の製薬会社も協力している。写真提供/高尾美穂

“病気がないのに重い”は、何とかできる!

「病気がないのに、生理が重い。この理由は、子宮をマヨネーズのチューブだとイメージすると理解しやすくなります。生理になると、チューブからマヨネーズを出そうと、子宮内膜がチューブを握る力を生み出します。このとき問題になるのが、チューブの出口です。子どもを産んでいない若い女性の場合、出口の穴がシャープペンシルの芯1本くらい細いケースもあります。小さな出口に向かってチューブを握っても、中身はなかなか出ません。まだ中身が残っているから、また握る。これが、病気でないのに痛みが重い原因になります」

しかも、生理痛が重い人は、軽い人に比べ、2.6倍も子宮内膜症になる可能性が高いという。
「大切なことは、ちゃんとした対策です。女性指導者の中にも“痛みは我慢するもの”、“生理だから仕方ない”という古い考え方をされるケースもありますが、時代は確実に“できることをしてゆく”へ移ってきています」

我慢せず、諦めず、“自分にとって問題だ”と思おう!

痛みは他人と比べられない分、我慢したり、相談しなかったりすることが多い。
「アスリートでも、“1、2日休めば、それで済む”という方がいます。困っていないのであれば、それでもいいのですが、大事な試合に当たったら、どうしましょう? 例えば、ゴルファーなら、死活問題ですよね」

実際、高尾先生のところにも、そういう選手が通っていたという。
「生理が重くて、“今日は無理”という選手がいました。ゴルファーは、毎週末に試合があるのに、4週間に1回、パターを投げちゃうんです。そこで、タイミングを調整しながらホルモン治療をすることで、生理がオフの日の月曜に来るよう、コントロールすることにしました」

大切なのは、我慢せず、諦めずに、これは“自分にとって問題だ”と思うこと。
「“自分にとって、解決したい課題だ”と思わない限り、解決はありません。仕方ない……、他の人もそうだから……と思っていたら、絶対に変わりません。“良くなる可能性がある悩み”という考えを持ってくれるといいなあと思います。もちろん、一度婦人科に相談するのも、とても良い選択のひとつです」

高尾先生がおススメ&実演する、リラックスのためのヨガ「抱えてツイスト」と「キャット&カウのカウアップ」、寝る前のリカバリー「筋弛緩(しかん)法」を実践してみよう。こちらは、ストレス緩和のための「抱えてツイスト」(arbeee.netの「MOVIE」コーナーにて、近日、公開予定!)

ストレス緩和のための「キャット&カウのカウアップ」

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