Interview

世界でイチバン有名な、日本のサッカークラブに
教わる、“這い上がる、工夫”!(続編)

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Vol. 7 岩本義弘さん(南葛SCゼネラルマネージャー)


〈プロフィール〉
いわもと・よしひろ/1972年生まれ。南葛SC取締役ゼネラルマネージャー。TSUBASA代表取締役、ウェブメディア『REAL SPORTS』編集長、サッカー解説者なども務める、スポーツに関する幅広い活動で知られるマルチプレーヤー。元『サッカーキング』『ワールドサッカーキング』編集長。

前編はこちら

働きながら、トップを目指す選手たち
それをサポートするGMの仕事術

「葛飾区からJリーグチームを!」
このキャッチフレーズを掲げる社会人サッカークラブ、「南葛SC」。
南葛SCが参戦する「東京都1部リーグ」に、現在、元プロがこれほど所属するチームはない。鹿島アントラーズ時代、日本代表にも選ばれた青木剛選手をはじめ、J2、J3でも十分に通用する選手を揃える。
サッカーゲームの「サカつく」(『プロサッカークラブを作ろう!』)的に言っても、圧倒的に上。いわば“勝てるチーム”である。
しかし、昨シーズンは、まさかの苦戦続きで、関東2部リーグ昇格のチャンスを逃す。
南葛SCのゼネラルマネージャー、岩本義弘さんは語る。
「正直、“普通にやれば、昇格できる”という甘さがありました。それが、一番の失敗です。失敗したものはしょうがないので、繰り返さないようにしますが、選手のレベルがどんなに高くても、やはり、サッカーはチームスポーツです。ピッチへの結果に、選手をどう落とし込んでゆくのか、新しい監督やコーチ、選手とともにやっていくしかありません」

1年を、全力でぶつかる
選手の情熱をサポートする

華々しく報道されるトップリーグJ1の選手の大半は、プロとしてチームと契約し、練習に専念できる環境にいる。
しかし、南葛SCが参戦する社会人リーグの選手たちは、元Jリーガーも含めて、みんな仕事をしながらサッカーを続けている。
「どんな競技にも共通していますが、働きながら競技も続けるというのは、本当に大変だと思います。情熱がないと、選手もスタッフも続けられません」
選手の仕事は、千差万別だ。
チームのスポンサー企業で働き、商品配送の仕事をする選手。イベント会社を自分で経営している選手や、昼間は小学校の先生をしている選手など、さまざま。
「元日本代表で、鹿島アントラーズにも在籍していた青木剛選手も、インソールやシューズの店を鹿島でやりながら、東京の葛飾まで練習に通っています」
選手たちの情熱を、シーズンの最後までサポートするのは、GMである岩本さんの最大の仕事のひとつだ。
選手の役割の確認だけではく、チームの環境整備や、個人のセカンドキャリアも含め、コミュニケーションを密に取ることに時間を掛ける。
「先シーズンは失敗で終わりましたが、終了後10日以内に、約30人の選手たちと、1人ずつ、それぞれ1時間半のミーティングをしました」
10日間で、約45時間。
岩本さんは、南葛SCのGMの仕事だけでなく、『キャプテン翼』に関連するライツ管理会社の経営や、ウェブメディア『REAL SPORTS』編集長など、スポーツ界でマルチに活動しており、海外出張もザラ。とにかく多忙なのだが……。
「時間を捻出するのはまあまあ大変でしたが、これだけは、他の人に任せられません。GMがレギュラークラスにだけ話を聞くようでは、選手との信頼関係は築けませんし。全員と、すぐにやるのが大事だなと思って、いろんな仕事をすっ飛ばして対応しました。でも、本当にそういうことが大事だと思っています」
勝てるはずのチームが勝てなかった理由を、選手たちは個別のミーティング時、自分たちなりの言葉で、岩本さんに伝えたという。
「その前のシーズンに比べて、練習の質は上がったけれど、一体感みたいなものがなくなった。そういう意見が、かなりありました。チームに新たに加わった選手もかなりいて、それぞれの選手たちの距離が、ちょっと離れていた。そこをもっと意識的に、一体感が出るようなつなぎ方を、懇親会なども含め、工夫すべきだったと反省しています」
選手同士のコミュニケーションをはかり、チーム全体の情熱を継続させる工夫。
文字にすることは容易だが、日々の練習や試合を通じて、絶えず実践することは、並大抵のことではない。

裏方の情熱を支える
感謝を伝える“場”作り

選手とのコミュニケーションだけでなく、裏方として支えるスタッフ、ボランティアとの信頼関係も、おろそかにはできない。
「そのスタッフが、チームに必要だということを、定期的に、ちゃんと伝えること。そして、チームの中で、そのスタッフ本人がやりたいことを、一緒に実現してゆくサポートを、ちゃんとすることです。もちろん待遇面も、できる限りのことはしようと思っています」
裏方の人たちにとって、その努力を認めることが、彼らの情熱の維持に欠かせないという。
南葛SCでは、チームの納会の時に、スタッフのみならず、ボランティア、メディカルチームも一緒になって選手と交流できるような“場”を設けている。
「そういう“場”で、選手からスタッフに、感謝の気持ちを伝えてもらいます。感謝が直接伝われば、気持ちは続きます。新シーズンは、そういう“場”を、もっと作りたいと思っています。月に1回は、練習を休みにして、選手同士だったり、スタッフと一緒だったりなど、コミュニケーションの“場”を作ってゆきます」
こうした“場”は、意図的に設けないと、なかなか得られないという。
「試合の後が理想なのかもしれませんが、グラウンドの使用時間の制約があったり、アウェーからの移動に時間が掛かったり、家族との時間も大事にしてもらいたいので、案外と難しいのです」
選手とスタッフの気持ちを通わせる“場”は、意図的に作る必要があるのだ。

「人生儲けて闘う選手たちと少しでも、同じ気持ちを味わう」

選手の情熱、スタッフの情熱、それぞれの思いを一つにするのは、容易ではない。
しかも、岩本さんは、サッカークラブの経営者として、異色な存在だ。
トップ選手の経歴があるわけではなく、スポーツチーム経営のプロとしての道を歩んできたわけでもない。
「20年ほど、サッカーメディアも含めた、サッカー専門の総合商社みたいな会社をやってきました。南葛SCをまとめる上で、そこでの経験や繋がりが、とても役に立っています。Jリーグの各部署はもちろん、各Jリーグクラブのフロントや社長に取材を続けてきました。話を聞くのと、実際に自分でやるのは大違いでしたが、“やったら上手くいくこと、上手くいかないこと”を学ばせてもらったのは大きいです」
GMとしてチームをけん引し、J昇格の夢を支える、岩本さん自身の情熱は、どこから生まれてくるのだろう?
「正直、人生、賭けています。自分のお金もつぎ込んでいますが、でも、“自分のため”じゃあ、情熱は継続しません。“このチームのため”、“この地域のため”っていう視点がなきゃ、とても続きません」
1年契約で人生を賭け、全力でプレーする選手たちと接するからこそ、岩本さん自身、情熱を継続すべく、自分を奮い立たせているという。
「人生賭けて闘っている選手たちと、少しでも同じ気持ちを、自分も味わおうと思ってやっています」

新たな指揮官とともに
情熱を燃やし続ける

新シーズン、南葛SCは、新たな監督を迎える。
新監督となる島岡健太さんは、大学サッカーの監督経験を15年、さらにJ1のクラブの監督を4シーズン勤めたキャリアを持つ、新シーズンのチームの最大の切り札と言える。
「今シーズンの対戦相手15チーム中、大学チームは5つ。大学生は、練習に専念出来て、何しろ若い。正直、難敵です。そういうチームを相手に、どういうサッカーをすれば勝つ可能性が高まるか、新監督には期待しています」
Jリーグとアマチュアの両方のサッカーが分かる新監督は、リーグ昇格のための、強力な戦略上の布石だ。
そして、その招へいも、GMである岩本さんの大切な役目である。
「スタッフにも相談はしましたが、新監督は、自分で探して、交渉し、オファーしました。
南葛SCの専任でやってくれます。ピッチの質が、より上がるような監督として、チームに来てもらえるはずです」
春からの新シーズンを前に、新たな監督を招へいし、チームの再生をはかる南葛SC。
岩本GMの差配の下で、さまざまな工夫で、その情熱を継続させている。
「カテゴリーが上がれば上がるほど、他のチームにはない魅力が出てきます。その意味でも、日本のトップリーグであるJ1にたどり着きたいと、高橋陽一先生とも話をしています。その後に、アジア、世界も視野に入れた、『キャプテン翼』という世界的なコンテンツにふさわしい、葛飾の財産ともいえるチームとして、世界に羽ばたくのが理想です。『キャプテン翼』には、それだけのパワーがあると思っています」

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