海を楽しむコミュニティ。理想は ハワイとオーストラリアの良いとこ取り!

#インタビュー

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Vol.13 飯沼誠司さん(館山サーフクラブ代表)

                                                           

〈プロフィール〉
いいぬま・せいじ/1974年、東京都生まれ。館山サーフクラブ代表、ライフセーバー、タレント。2006年に「館山サーフクラブ」を千葉県で立ち上げ、水辺の事故を予防するライフガード活動、ジュニアプログラム、「オーシャンフェスタ館山」開催などに従事。館山と東京に拠点を構えて活動している。2021年5月からの「2021関西ワールドマスターゲームズ」では、ライフセービング競技に出場の予定だ。

インタビュー前編はこちら

房総半島の海の街、館山。
穏やかで温暖な、館山の海に魅せられたアスリートも多い。
ライフセーバーでタレントの飯沼誠司さんも、そのひとり。
飯沼さんは、「館山サーフクラブ」を立ち上げ、6つの浜で夏場の監視活動や、ジュニアの育成、地域活性のイベントなどを運営している。
「館山の海を、僕も楽しみたいので、釣りをしたり、カヌーやSUP(スタンドアップパドルボード)に乗ったりと、機材がどんどん増えて、館山の家は機材置き場と化しています。サーフボードだけで10本、それにロードバイク、スケボー、釣り道具、トレーニングでも使う水上バイクや、アウトリガーカヌーも3艇。家じゅう砂だらけです(笑)」
スポーツの力で、地域おこしに取り組む。
その実践例を、引き続き紹介してゆこう。

写真提供/TATEYAMA SURF CLUB

 

 

コミュニティの理想の形を
館山サーフクラブで実現する

 

 

飯沼さんは、生涯スポーツとしてのライフセービングの可能性を追求し、館山での実践を通して模索し続けている。
「館山サーフクラブを、ライフセービングだけのクラブにしたくありません。なので、年間を通じて、海を楽しむ意味で“サーフクラブ”という名称にしました。泳げない人でも、ライフセーバーではない人でも参加できるクラブにしたかったのです。ライフセービングは、泳いで助けるだけではなく、やることはたくさんあります。海外だと、車いすの方も当たり前のこととしてライフセービングの活動に参加していますから」
飯沼さんは、オーストラリアやハワイの“良いとこ取り”が理想だと語る。
「オーストラリアでは、海岸線の3㎞ごとくらいにライフセービングのクラブハウスがあって、ジュニアからシニアまで、素晴らしいコミュニティができています。クラブの一員には、クラブで水着に着替え、海で泳いで帰るだけという方もいます。僕にとって、それが理想だと思っています。ライフセービングに参加をする、さらにエキスパートを目指すのもよいけれど、全員である必要はない。できれば、カフェを併設しているようなクラブハウスが欲しいですね。オーストラリアだと政府からの補助金があったり、建物からのレストランやカジノなどの副収益で運営できたりしています。皆さん、何かいいアイデアがあったら教えてください!」

写真提供/TATEYAMA SURF CLUB

 

ゴルフも、サーフィンも
自転車も、楽しもう!

 

 

館山サーフクラブの練習会は、1週間か2週間に1回の割合で、社会人や県外からの参加もしやすいように設定されている。
「全員が参加するのはライフセービング活動で、ガード部、競技部、ジュニア部があります。ガード部では、消防とか海上保安庁と連携して勉強会やったりとかですね。競技部では、外房で波の練習をしたり、波がなくて風があればダウンウインドゥ(追い風)を使った練習をしたりもします」
こうしたライフセービングの活動に加え、単にお酒を飲みに行ったり、ジュニアの練習会を手伝ったり、その保護者の方たちと交流したり。さらには、サーフィン部、ゴルフ部、自転車部など部会も作り、地元のコミュニティとして育てている。

写真提供/TATEYAMA SURF CLUB

 

トライアスロン、マラソン大会
地域のイベントとも連携する

 

 

ライフセービングを核とした館山サーフクラブの活動の広さは、地元イベントとの連携にも現れている。
毎年1月に行われる1万人規模の「館山若潮マラソン」でも、サーフクラブのメンバーを15人ほど配置している。
「AEDモバイル隊です。心停止の救命救助に使われるAED(自動体外式除細動器)を積んだ自転車で、コースを回遊しながら、一次救命に当たっています。トランシーバーや電話で、いち早く駆けつけたり、具合が悪い人を収容車に搬送するなど、陸でもライフセービングの活動をしています。僕は、ゲストランナーとして10㎞を走っていますが(笑)」
この他にも、海水浴シーズンに行われる「館山オープンウオータースイムフェスティバル」や、北条海岸のスポーツショップ「シーデイズ」のSUP(スタンドアップパドルボード)イベントなど、地域のイベントとの連携を欠かさない。
「昨年10回記念大会となった『館山わかしおトライアスロン』では、沖ノ島のスイムパートでライフガードとして参加させてもらっています。ラン+バイク+スイムと3種の競技で競うトライアスロンは、最初に海で泳ぐので、地元のトライアスリートとも連携してガードに入ります」

修学旅行コースとして
ライフセーバー体験を提供

 

 

風光明媚で、都心からのアクセスも良い館山市は、修学旅行やスポーツ合宿など、観光誘致にも力を入れている。
そうした取り組みのサポートも、サーフクラブの活動のひとつだ。
「他県から来る団体の臨海実習などでも、安全管理をしています。修学旅行は、京都や名古屋からが多いのですが、5月から9月くらいまで、海の体験としてのライフセービングへ、毎回30~40名が来てくれています」
修学旅行の定番である、東京ディズニーランドも千葉。館山へ足を伸ばしてのライフセービング体験がパッケージ化できているという。
「僕らのモチベーションは、館山の海を楽しんでもらうことなので、“ディズニーランドより楽しかった”と修学旅行生に言わせることです(笑)。クラブの高校生や大学生も手伝ってくれるので、“本当に楽しかった”って言ってくれます。価値あることをやっているんだと自負しています」

夏のシーズンに向け
走る、漕ぐ、走る!

 

 

46歳になる現在も、飯沼さんはトレーニングを欠かさない。
「今日は、オフシーズンの基礎体力作りです。年間を通してカラダを動かしますが、ライフセービングのハイシーズンは、5~10月です。なかでもコアとなる、7月と8月にきちんとガードに入れるよう、トレーニングを組み立てています」
水温が高い館山の海だが、季節はまだ冬。
「ビーチを走って、パドルボードを漕いで、また走って、パドルボードを漕ぐ。というのをエンドレスでやって、心拍数を上げ過ぎずに繰り返します。ライフセービングは上半身も下半身も使うので、上と下に刺激を入れつつ、ラン+スイム+ラン、ラン+ボード+ランとか、ラン+スキー(サーフスキーという名前のカヤック)+ランなど、飽きないメニューを選んでいます。夏のハイシーズンに入れば、今日の2倍くらいのスピードでやります」
飯沼さんは、通常のトレーニング加え、2021年に行われる、ある大会へ向けても準備を進めている。

現役アスリートとして出場する
「2021関西ワールドマスターゲームズ」

 

 

「ラグビーW杯、東京オリパラに加え、日本の3大ビッグイベントと言われる、ワールドマスターゲームズです。この大会にライフセービングも入っているので、選手として頑張ろうと考えています」
ワールドマスターゲームズは、2021年5月に関西で開催される、誰でも参加可能な、生涯スポーツの国際総合競技会だ。「2021関西ワールドマスターゲームズ」では、マラソンを含む陸上競技、サッカー、ダンススポーツ、綱引き、そしてライフセービングなど、オープン競技も含む67の競技で17日間の開催が予定されている。
「まだ出場する種目を迷っていますが、今までやってきたオーシャンマン(スイム、ビーチラン、パドルボード、サーフスキー⦅カヤック⦆の4種目複合)は、確実にエントリーします。オーシャンマンは、ライフセービングの花形で、全ての要素が入っている種目ですから。それから、自分が得意にしているサーフスキーにも出たいですね」
館山サーフクラブと飯沼さんの挑戦は、まだまだ続く!

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