Interview

女性アスリートの“秘かな”お悩み
ランキング第4位、第3位、発表!

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“女性アスリートのお悩み、ありがちランキング”。
その悩みの多くは、女性ホルモンが、やはり深~く関係している。
キーワードとなるのが、女性らしさのためのホルモン=エストロゲン。

今回は、エストロゲンの凄いパワーを確認しながら、引き続き第4位「過多月経」、第3位「生理不順」を紹介してゆこう。
お話を伺ったのは、スポーツドクターでもある婦人科医、東京・渋谷区の「イーク表参道」副院長、高尾美穂先生。
高尾先生おススメのヨガも、先生のレッスン動画で紹介しちゃいます!

インタビュー前編はこちら

Vol.15 高尾美穂さん(「イーク表参道」副院長)

〈プロフィール〉
たかお・みほ/産婦人科専門医・医学博士・婦人科スポーツドクター。「女性のための統合ヘルスクリニック イーク表参道」副院長、「株式会社ドーム」アドバイザリードクター、「スポーツ庁・国立スポーツ科学センター」女性アスリート育成・支援プロジェクトメンバー。この他、大手スポーツクラブ数社の顧問医師のほか、「一般社団法人アスリートヨガ事務局」理事も務め、ドクター兼ヨガ指導者として、数多くのアスリートの指導にあたり、関連する講演活動も数多く行っている。

“女性らしさ”のための
ホルモン=エストロゲン

「女性ホルモンの中で、一番有名で、大切なのが、エストロゲンです」
スポーツドクターでもある婦人科医、高尾美穂先生は、男性にも分かるようやさしい言葉で語り掛ける。
「このホルモンに名前を付けるなら、“女性らしさのためのホルモン”ですね。その理由は、女性が“こんな状態だったら嬉しいな”という働きをしてくれるから。お肌をいい状態に、髪の毛をつややかに保つのも、エストロゲンの働きです。でも普段から、肌や髪の状態を“エストロゲンのおかげ”とは思いませんよね(笑)。だからでしょうか、エストロゲンが無くなって、初めて多くの方々が、その“ありがたみ”に気づきます」
このタイミングが、まさに“閉経”なのだという。

期間限定だからこそ
ライフステージを意識したい

「実は、女性の人生には、もう1回、エストロゲンが無い状態で過ごす機会があります。それは、妊娠出産のタイミングです。妊娠中は、卵巣からエストロゲンを作るのではなく、胎盤からエストロゲンを作ります。この時期は、卵巣から作るよりも、遥かにたくさんのエストロゲンが必要となるからです。でも、無事に赤ちゃんが生まると、一緒に胎盤も出てきます。胎盤がカラダの外に出ることによって、一時的にエストロゲンが失われ、お肌が乾燥したり、髪の毛が細くなるなど、多くの方が感じるようです」

高尾先生によると、エストロゲンを作る卵巣は、約10歳~50歳くらいまでの40年間ほど、期間限定でしか働かない、レアな臓器だという。
「卵巣は、男性の臓器で言うならば、精巣に相当します。精巣は、生まれた時から死ぬ直前まで、一応、働いてくれます。ここが、ヒトの雌と、ヒトの雄の一番大きな違いです。卵巣は、約10歳~50歳くらいまで、40年間ほどしか働きませんから、女性が妊娠できる能力には、タイムリミットがあると言えます。タイムリミットがある分、ライフステージを考えて、自分の人生を前倒しに捉えてくれるといいなぁと、いつも願っています」

女性のカラダには
良質な脂質が、絶対に必要!

「エストロゲンは、さらに大事な働きを、カラダの内側でしています」
ひとつの例として、高尾先生は、コレステロール値を下げる効果を挙げる。
生活習慣病の原因のひとつに、悪玉コレステロールがあるが、エストロゲンには、コレステロールの値を下げ、カラダへの負担を下げる効果があるという。

「その理由は、“エストロゲンの材料が、コレステロールだから”と考えると分かりやすくなります。しかも、そのコレステロールの材料は、実は、脂肪なのです。体脂肪率が極端に低い、ガリガリの女性の生理が止まってしまうのは、エストロゲンが作れないから。エストロゲンを保つためにも、女性は、食事からの良質な脂質が、絶対に必要なのです」

エストロゲンは
骨も強くしてくれます!

エストロゲンの働きで、もうひとつ大事なのは、骨を強くすること。
骨は、“大人になれば完成”というイメージがあるが、1日にカラダ全体の7%分、古い骨を壊し、新しく作り変えるという作業を繰り返している。

「骨を壊すのは、破骨細胞という細胞です。実は、エストロゲンには、この破骨細胞の働きを抑える働きがあり、骨を丈夫に保ってくれています。でも、エストロゲンが無くなると、破骨細胞の働きが活発になってしまいます」

骨を→壊して→作って→壊して→作っての、良いリズムが崩れて破骨細胞が活発になり、骨を→壊して→壊して→壊して→やっとこ作れて……という結果、骨量が減ってしまうのだ。
「まさに、おばあちゃんが、布団でつまずいて骨折するメカニズムです。“おばあちゃん”と言われるほど閉経から時間を経ると、そんな状況でも骨が折れてしまう可能性が高まるわけです」

さらに、高尾先生によれば、骨が脆くなるメカニズムは、おばあちゃんになるのを待たずとも、起こりえるという。
「約10歳~50歳ほどのエストロゲンがあるはずの40年間に、ある程度の期間エストロゲンが不足すると、骨が脆くなる状況が生まれてしまいます。激しく動き、骨にも負担をかけるアスリートこそ、生理がある、つまりエストロゲンがある状態で、競技を続けて欲しいのです」

2019年11月、ケニアのスラム街で、女性対象の出張保健サービスを視察。「世界で妊産婦と女性を守る」国際NGO〈JOICFP(ジョイセフ)〉の取り組みを伝える活動も行っている。写真提供/高尾美穂

《第4位 過多月経》

心配は、集中力とパフォーマンス低下に直結する!

女性ホルモンの代表選手、エストロゲンの働きが分かったところで、悩みランキングに戻るとしよう。
誰かと比べることがない分、意外に悩む人が多いのが“生理の量”だという。

「生活上、多くて困っているのであれば“過多月経”となります。今の時代、代表的な治療薬であるピル以外にも、いろいろな種類のホルモン治療があります。困っていたら、一度婦人科に相談してみるのが良いですね」
女性アスリートに共通するのが、心配すること自体の影響だ。

「アスリートで、ウェアへの染みを心配する方はたくさんいます。バスケなど、白のユニフォームが多かったりしますから」
ウェアの心配は、集中力の低下に直結し、そのままパフォーマンスに影響を及ぼすという。

「困っているなら、大事な試合では、生理に当たらないようコントロールしてゆこうという考え方もできます。実際、フランスでは、女性アスリートの80%がピルを使っています。現在の日本では、プールに入る競泳や水球をはじめ、競技にもよりますが30%ほどです。2012年のロンドンオリンピックに参加した日本のトップアスリートでも、ピルの使用が7%だけでしたので、確実に増えてきています」

クスリは、“困ったこと”への対象法のひとつ

大切なことは、“ピルは、困っていることを解決する一つの手段”にすぎないと高尾先生は語る。
「指導者に間違って欲しくないのは、ピルは“飲ませりゃいい”というものではない点です。血栓症という、血液が固まりやすくなる、重篤(じゅうとく)な副作用もあります」

一般的なピルの副作用は、年齢が高い、タバコを吸う、肥満の3つがリスクを高めるという。これに加え、アスリートには、アスリート特有のリスクがある。
「試合中に水を飲めず、脱水になりやすいことでも、副作用のリスクは上がります。また、競技レベルが上がり、飛行機などでの長距離移動でエコノミークラス症候群になるような場合もです。こうしたことを踏まえた上で、それでも“困ったこと”への対策として、ピルという選択をして欲しいですね」

ケニア視察では、スラムでの支援スタッフ=ピアエデュケーターにもインタビュー。女性のカラダや、妊娠についての正しい知識の普及を行っているという。写真提供/高尾美穂

《第3位 生理不順》

このお悩みは、ストレスに影響される!?

「3番目は、生理が順調に来ない、生理が止まるなどの“生理不順”です」
生理不順は、エストロゲンと排卵の仕組み、そしてストレスに関係している。
「エストロゲンがしっかり出ていないと、そもそも排卵が起こりません。しかも排卵は、自分の意思で卵巣をコントロールできるわけではなく、脳からの命令で始まります。加えて、この命令を司るのは、ストレスを受け止める場所でもあります。だから、大きすぎるストレスがあると、排卵が止まり、その後に来るはずの生理が止まってしまうのです」
生理のメカニズムには、メンタルも大きく関係しているのだ。

自分のストレスを“客観的に見る”習慣

 その対策は、よく知られているように、まずは自分の生理の周期を知ること。
「体温変化で生理周期を把握したうえで、自分の状態の変化、例えば、2~3カ月バラついてきたとか、止まったなどをチェックします。さらに、その数カ月前までさかのぼって、ストレスになりうる経験がなかったか、思い出してみます」

現代は、仕事の量や人間関係、通勤電車など、ストレス社会だ。
「アスリートの世界は、まさに競争ですから、一般の私たちよりも強いストレスがあります。代表に選ばれるかの不安、指導者との関係、トレーニング量など、直接的なストレスがたくさんあります」

そんな時に大切なのは、“客観的に自分を見る”習慣だという。
「今現在、自分にとってストレスフルな環境なのかどうか? 客観的な目で、普段の生活や、トレーニングを見返してみる。シーズンの節目などに、冷静になって、箇条書きにするのも良いでしょう。これを習慣にすれば、自分のストレスへの対応が上手にいくようになり、生理不順が改善することもあります」

高尾先生おススメ、ストレス緩和のためのヨガは2種類。まずは「抱えてツイスト」続いて、「キャット&カウのカウアップ」動画を、実践してみよう!(arbeee.netの「MOVIE」コーナーにて、近日、公開予定!)ストレス緩和のためのヨガ「抱えてツイスト」

ストレス緩和のための「キャット&カウのカウアップ」

次回はいよいよ、ベスト2と1の発表!

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